モラフスキー・クルムロフ Moravský Krumlov

 クルムロフといえば、チェコには世界遺産で有名なチェスキー・クルムロフがあるが、今回紹介するのはモラヴィアにあるモラフスキー・クルムロフである。もともと「クルムロフ」という言葉は、川の曲がり角、湾曲を意味する。そのような地形には防衛上の意味からも、古くから城塞、そして都市が成立しやすい。地図で見ないとちょっとわかりづらいが、チェコのクルムロフに劣らず、モラヴィアのクルムロフも見事に川に囲まれている。もっとも、城を含めて景観はかなり異なり、訪れる人は圧倒的に少ない。



 さて、今回この街を取り上げたのは、チェコとモラヴィアを比較するためではない。ここのお城には、アルフォンス・ムハが描いた「スラヴ叙事詩」という二十枚からなる連作が展示してある。一般にはパリで描いたアール・ヌーヴォー様式のポスター画によって、そして日本では名前もミュシャとして知られている、彼のチェコ帰国後の作品には、民族的な色彩が濃厚で、「スラヴ叙事詩」はスラヴ民族の歴史における幾つかの重大な事件をテーマとしている。一枚の大きさ4×5m、あるいは6×8mといったサイズで描き切っており、かなりの迫力がある。その絵画的価値は門外漢の筆者にはわからないが、ここでは、全体に緑を基調とした四枚目の絵について一言付しておきたい。この絵のタイトルは「イヴァンチツェのモラヴィア兄弟団の学校」とある。イヴァンチツェというのは、クルムロフのすぐ近くにある街で、ムハの出身地にあたる。この街にはフス戦争時代に、フス派の聖職者を養成するための学校がつくられた。絵の左奥にぼんやりと見える白い教会の塔は、ブルノからクルムロフまでバスで来る途中、実際に目にすることができる。

 彼が本当に表現したかったものを描き、ポスター画で儲けたお金でお城を買って展示場所をつくった作品である。ブルノからほんのちょっと足を伸ばしてみて欲しい。