マリアーンスケー・ラーズニェ Marianské Lázně

 チェコにも何ヶ所か温泉地があるが、特にカルロヴィ・ヴァリ、マリアーンスケー・ラーズニェ、そしてフランチシュコヴィ・ラーズニェの三つが名高い。いずれもチェコの西部国境周辺の、緑の深い地域にある。チェコの他の温泉地と同じく、マリアーンスケー・ラーズニェの開発が進んだのは、19世紀に入ってからのことである。

 駅からおよそ2kmほど奥にある街の中心地には、ネオ・バロック様式で建てられた大きなコロナーダがある。ここには三つの源泉が湧き出ていて、温泉水を飲むことができる。とても不味いらしい。「らしい」というのは、筆者は不味いとわかっているものをわざわざ飲むほどの知的好奇心をとっくに失っているので、せっかく現地まで行ったものの、試さずに帰ってきたからである。ここでは噴水ショーも行っており、周囲には緑のきれいな公園も広がっている。春から夏にかけては色取り取りの花が咲き乱れているらしい。ここでも「らしい」というのは、私がマリアーンスケー・ラーズニェに行ったのは一月の、一番寒さが厳しい時期だったからである。日本では「冬の温泉街」というと、ちょっと特別な旅情を醸し出し、人気も高いと思うのだが、チェコの冬の温泉街はまったく逆である。ひとけはなく、なんともうら寂しいものであった。

 お店で絵ハガキを買ったとき、まずドイツ語で値段を言われた。国境が近いこともあり、昔からドイツ人の滞在客が多かったらしい。街はゲーテが滞在したことも売りにしている。地域博物館前には文豪の銅像もあり、私が行ったときには雪の上に直に座っていたが、戻ってからガイドブックを見たところ、彼は台座の上の椅子に座っていた。全体の半分近くが雪に埋もれていたらしい。こんな調子では観光客の散策など見かけないはずである。ここまできて言うまでもないが、チェコの温泉には夏に行くことをオススメする。