ブルノ Brno

 チェコ共和国第二の都市ブルノは、共和国の東半分を構成するモラヴィア(Morava)地域の中心都市でもある。そして、「モラヴィアの中心である」という状況は古く中世にまで溯る。モラヴィアが恒久的にチェコに統合されたのは11世紀のことであるが、その後しばらく、モラヴィアには三人の分国侯がいた。その三人の拠点であったブルノ、オロモウツ(Olomouc)、ズノイモ(Znojmo)の三ヶ所が、中世を通じてモラヴィアの中心地をなしていた。なかでもブルノは、モラヴィア辺境伯の居城が置かれていたところである。

 街の見所は、いつも野菜や果物の屋台で賑わう緑の市(Zelené nám.)、街を見下ろす巨大な聖ペテロ=パウロ教会(katedrála sv.Petra a Pavla)、近代にはハプスブルク帝国の監獄として使われていたシュピルベルク城(hrad Špilberk)、などがある。そして2001年には、近代建築としては珍しく、チューゲンハット邸が世界遺産に指定されている。或いは、生物で習った遺伝の法則をご記憶だろうか?メンデル(Mendel)がエンドウ豆の交配実験をしていたのも、ここブルノである。

 私事で恐縮だが、ブルノは、筆者がチェコで(というより、ヨーロッパで)一番好きな街である。それは、この街が筆者にとって初めての外国であった、という多少特別な経験によるのだが、初の海外生活をこのようなノンビリとした街で過ごした結果、外国嫌いにならずにすんだ。いまだに、ブルノをただ通過するときでも、聖ペテロ=パウロ教会を見上げるために電車の窓にしがみついてしまう。この感情は、たとえ40万都市とは思えないほど駅が小さくても、聖ペテロ=パウロやシュピルベルク以外にそれほど見るべきものがなくても、旧市庁舎に吊り下げられている「ブルノのドラゴン」がワニの剥製にすぎなくても、絶対に変わらないだろう。

 お願いします。是非、一度訪れてみてください。………責任は負いませんが。