ブジェツラフ Břeclav

 ジェチーン(Děčín)とは逆に、オーストリアへ抜けるユーロ・シティのチェコ側最終駅である。或いは、スロヴァキアを通過してブダペストへ向かう特急も、共にこの辺りでパス・コントロールを受ける。プラハ、ウィーン、ブダペストをつなぐ十字路にあたることから、早くから重要視されてきた土地である。11世紀の半ばに大公ブジェチスラフ Břetislavが南モラヴィアの行政拠点を置き、12世紀以降、城の建築が始まった。街の名は彼に由来する。

 このように、中世以来国境の要衝として栄えたはずのブジェチスラフだが、素っ気無い駅の外見と同じように、現在市内にその名残を感じさせるようなものは何も無い。インフォメーションで、歴史的な街並みは残っていないのか問い合わせたが、はっきり「無い」と言われた。駅前の通りを真っ直ぐに進んでいくと、やがてディイェ川に出る。川を越えてさらに直進すると、何やら奇抜な外観をした教会が目に入る。第二次大戦中に破壊された聖ヴァーツラフ教会(Kostel sv.Václava)の跡地に、1995年になってから何かのプロジェクトの一環として再建されたため、このような外観になったらしい。

この街で唯一の見るべきものと言っても良い城跡は、聖ヴァーツラフ教会の横を通り抜けて、小川沿いにしばらく行くとようやく現れる。ただし、本当に城跡であって、展示品などが見られるわけではない。16世紀に改築されたルネサンス様式の城館だが、屋根も崩れた哀れな姿を晒している。だが、西日を受けた建物を眺めると、なんだか牧歌的な風景に見えなくもない。ある年代の人たちには、ハイジたちがクララのために準備した麓の村の家の様、とでも言えばわかってもらえるだろうか(ちょっと苦しい気もするが)。

世界遺産に登録されているレドニツェ&ヴァルチツェ(Lednice Valtice)地域へは、ここからバスで20分程度。悲しいかな、現在はここに留まってくれる人のない、通過されるだけの街である。